第9巻 618P 拾遺和語灯録 了恵輯緑

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a01 惡業ををそるるは。彌陀の本願を信ぜさる也。數遍
a02 をかさぬるは。一念の往生をうたがふ也。行業をい
a03 へは。一念十念にたりぬへし。かるかゆへに數遍を
a04 つむへからす。惡業をいへは。四重五逆なをむまる。
a05 かるかゆへに諸惡をはばかるへからずといへり。こ
a06 の義またくしかるへからす。釋尊の説法にもみえ
a07 す。善導の釋義にもあらず。もしかくのごとく存ぜ
a08 んものは。總しては諸佛の御意にたがふへし。別し
a09 ては彌陀の本願にかなふへからす。その五逆十惡の
a10 衆生の。一念十念によりてかのくにに往生すといふ
a11 は。これ觀經のあきらかなる文也。たたし五逆をつく
a12 りて十念をとなへよ。十惡ををかして一念を申せと
a13 すすむるにはあらす。それ十重をたもちて十念をと
a14 なへ。四十八輕をまもりて四十八願をたのむは。心
a15 にふかくこひねがふところ也。をよそいづれの行を
a16 もはらにすとも。心に戒行をたもちて。浮囊をまも
a17 るかことくにし。身の威儀に。油鉢をかたふけずは。
b01 行として成就せずといふ事なく。願として圓滿せす
b02 といふ事なし。しかるをわれらあるひは四重ををか
b03 し。あるひは十惡を行す。かれもをかしこれも行す。
b04 一人としてまことの戒行を具したるものはなし。諸
b05 惡莫作。衆善奉行は。三世の諸佛の通戒也。善を修
b06 するものは。善趣の報をえ。惡を行する者は。惡道
b07 の果を感すといふ。この因果の道理をきけともきか
b08 ざるかことし。はじめていふにあたはず。しかれとも
b09 分にしたがひて惡業をととめ。縁にふれて念佛を行
b10 じ往生を期すへし。惡人をすてられすは。善人なんそ
b11 きらはん。つみををそるるは本願をうたがふそとい
b12 ふは。この宗にまたく存ぜさるところ也。つきに一
b13 念十念によりてかの國に往生すといふは。釋尊の金
b14 言也。觀經のあきらかなる文也。善導和尚の釋にい
b15 はく。下至十聲一聲等定得往生。乃至一念無有疑心
b16 故名深心といへり。又いはく行往坐臥不問時節久近
b17 念念不捨者。是名正定之業。順彼佛願故といへり。